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指示高度は、常に実際の高さと一致するわけではありません。「高度の種類」や「気圧とQNH」でも触れたとおり、高度計の指示にはいくつかの原因でズレが生じます。

QNHの設定差によるズレはすでに扱いました。この記事で扱うのは、もう一つの原因である気温によるズレです。

気温が標準大気の想定からずれていれば、指示高度と実際の高さの間には差が生まれます。

高度計は「標準大気」を前提に計算している

高度計は、高さを直接測っているわけではありません。測っているのは気圧で、それを高度に換算して表示しています。

この換算には、「気温はこういう割合で下がっていく」という前提——標準大気——が使われています。標準大気では、気温は高度が1,000ft上がるごとに約2.0℃ずつ下がっていくと定められています。実際の気温がこの前提どおりであれば、換算された指示高度と、実際の高さは一致します。

問題は、実際の気温が標準大気の想定からずれているときです。この場合、換算に使っている前提そのものがずれているため、指示高度と実際の高さの間に差が生まれます。

気温が低いと、思っているより低く飛んでいる

ここで言う「実際の高さ」とは、「高度の種類」で扱った真高度(True Altitude)のことです。
実際の気温が標準大気の想定より低いとき、空気は密度が高く、ぎゅっと縮んだ状態になります。空気が縮むと、同じ気圧の面どうしの間隔も狭くなります。気圧が同じだけ下がるのに必要な高度差も、標準大気の想定より小さくなるということです。

標準大気と寒冷時の空気の柱の比較

高度計は、標準大気を前提に「気圧がこれだけ下がったから、高度はこれだけ上がったはず」と計算しています。ところが実際の空気は縮んでいるため、その計算どおりの高さまでは上がっていません。指示高度が示す高さより低いところを飛んでいることになります。

逆に、実際の気温が標準大気より高いときは、空気の柱が伸びている分、実際の高さは指示高度より高くなります。こちらは安全な方向のズレです。

高度計自体は正常に動作しています。ズレているのは、高度計が前提としている標準大気と、実際の大気の違いです。「寒いときは、指示高度より低いところを飛んでいる」——この方向を覚えておくことが重要です(英語圏では "From hot to cold, look out below." と表現されることがあります)。

どのくらいズレるのか

ズレの大きさは、標準大気からの気温差が大きいほど、そして基準点(QNHを設定した基準となる海面)からの高度が高いほど広がっていきます。

目安としてよく使われるのが、「標準大気より10℃低いごとに、基準点からの高度に対して約4%の誤差が生じる」という考え方です。厳密にはもっと細かい数値になりますが、航空では暗算しやすいように丸めた近似式として広く使われています。

たとえば、気温が標準大気より20℃低い日に、QNHの基準点から1,000ft上空を飛んでいるとすると、誤差はおおよそ1,000ft × 4% × 2 = 80ftほどになります。

高度が高くなるほど、この誤差も比例して大きくなっていきます。冬の寒冷地や、標高の高い空港からの出発直後は、この誤差が数百フィート単位に達することもあります。

まとめ

寒い日は、指示高度より低い位置を飛んでいます。暖かい日は逆です。

高度計ではなく、前提としている標準大気と実際の大気が違うことが原因です。指示高度をそのまま実際の高さと思い込まないこと。これが、この記事で伝えたかったことです。

ILS(計器着陸装置)による進入のように、地面が近い状態でシビアな高度のコントロールが求められる場面では、この気温誤差を知っているかどうかが精度に直結します。

表

標準大気よりも気温減率が大きい——つまり寒いとき、実際に飛んでいる高度は指示高度よりも高い?低い?

裏

低い

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