「航法」カテゴリについて

飛行機を目的地まで安全に飛ばすには、自分がどこにいて、どの高度を飛んでいて、どのくらいの速度で進んでいるかを正確に把握する必要があります。
「航法」カテゴリでは、そうした位置・高度・速度・時間にまつわる知識を扱っていきます。

気象や法規とも深く絡み合う分野ですが、ここでは目的地までどのような考え方をしながら飛ぶのかという視点で整理していきます。

高度には複数の種類がある

高度計(アルティメター)は、気圧を測って高度を計算する計器です。
大気の気圧は高度が上がるほど低くなる——その関係を使って「今どのくらいの高さにいるか」を読み取っています。

ただし、大気の状態は常に変化しています。気温が違えば空気の密度が変わり、同じ気圧でも実際の高さが変わります。地上の気圧も場所と時間によって異なります。
つまり、高度計の数値が同じでも、実際の高さはどの気圧面を基準にするのかによって違うわけです。

高度の種類とは、「どこを・何を基準とした高さか」の違いによって生まれるものです。
それぞれの意味を理解して、場面に応じて使い分けることが求められます。

なお、高度計がそのとき指し示している値を指示高度(Indicated Altitude)といいます。
高度計は基準値を変えることができるものがほとんどですが、基準をどこにしていようと、高度計に表示されている値はすべて指示高度です。

基準がどこにあるか——つまり指示高度が何を表しているか——は、アルティメターセッティングと呼ばれる補正設定によって変わります。後ほど詳しく触れますが、設定によって指示高度=真高度になることもあれば、指示高度=気圧高度になることもあります。

4種類の高度

絶対高度(Absolute Altitude)

絶対高度は、その直下の地表面からの高さです。
「今、地面からどのくらい離れているか」を表します。

電波高度計(ラジオアルティメター)が直接測る値で、着陸直前の高度コールアウトや地上接近警報装置(GPWS / TAWS)などで重要な役割を持ちます。
気圧とは関係なく、地形が上がれば地表面とのクリアランスは小さくなります。同じ高度を保ったまま海上から山岳地帯へ飛行すると、気圧高度計の指示は変わらないまま、地面との距離は縮まっていきます。

真高度(True Altitude)

真高度は、平均海面(MSL)からの実際の高さです。
平均海面はどこでも同じ共通の基準として使えるため、航空図に載っている山の標高や空港の標高も、基本的にはこの平均海面(MSL)を基準に表されています。飛行中の航空機について、このMSLからの実際の高さを真高度と呼びます。

厳密には気温の影響で高度計の指示値と実際の高さにズレが生じるため、正確な真高度を求めるには温度補正が必要です。ただし実運用上は後述するアルティメターセッティング(気圧補正)のみを行います。
寒冷地など標準大気から大きく外れた環境では、このズレが大きくなる点には注意が必要です。アルティメターセッティングのズレが真高度に与える影響については、別記事で詳しく扱います。

気圧高度(Pressure Altitude)

気圧高度は、標準大気の海面気圧(29.92 inHg / 1013.25 hPa)を基準としたときの高度計の指示値です。
アルティメターのセッティングを29.92(QNE)に設定したときに読める値、と言い換えてもいいです。

実際の地上気圧に関係なく、「標準大気ならこの気圧はこの高度に相当する」という共通の尺度で高さを表します。
他の航空機との縦間隔を保つ際に使われますが、詳しくは次のアルティメターセッティングの章で扱います。

また、気圧高度は密度高度の計算にも使われます。

密度高度(Density Altitude)

密度高度は、気圧高度に気温の影響を加味した値です。
「大気が実際にどのくらい薄いか」を示す指標で、機体のパフォーマンスと直結します。

気温が高いほど空気は膨張して密度が小さくなるため、同じ気圧高度でも夏場や高温環境では密度高度が高くなります。密度高度が高い=空気が薄い=エンジン出力・揚力ともに低下、ということです。
離着陸に必要な滑走距離や上昇率に影響するため、パフォーマンス計算の前提として意識する必要があります。

具体的な計算はコンピュターが行う領域で、パイロットとしては「密度高度が高いとパフォーマンスが落ちる」という感覚を持っておくことが重要です。

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基準にするものの種類
4つの高度を見てきましたが、「絶対高度」と「真高度」は物理的な高さを基準にしています。
一方「気圧高度」は気圧面を基準にしています。
高度計は、気圧を測って高度情報に変換しているため、気圧(29.92)を基準にしている気圧高度は、すべての航空機同士で高度計が誤差なく同じ値を示します。
絶対高度はどこの上を飛んでいるかによって異なりますし、真高度は飛んでいるエリアのその時の実際の気圧を基準とするため、航空機ごとにずれが生じてしまうのです。

航空機同士の縦間隔を保つには、「すべての航空機が誤差なく同じ基準からの高さをもとに飛行する必要がある。」それには気圧高度を用いるのが最も適しているのです。

高度の種類

アルティメターセッティング:QNHとQNE

高度計は気圧を測って高度を表示しますが、「どの気圧を海面(ゼロ)として扱うか」を設定する必要があります。これがアルティメターセッティングです。

QNH

QNHは、その場所の海面気圧に補正した値です。
アルティメターにQNHを設定すると、地上では高度計が空港の標高を指します。つまり、真高度に近い値が読めます。

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QNHの値は場所とその時の気圧によって異なり、この前説明したATISやMETARで報じられたり、管制官がそのエリアにいる航空機に口頭で伝えたりします。

出発・到着フェーズや低高度飛行では、地上の障害物や地形とのクリアランスを確保するためにQNHを使います。

QNE(STD:29.92 inHg / 1013.25 hPa)

QNEは、標準大気の海面気圧である29.92 inHg(1013.25 hPa)を固定で使う設定です。コックピットやATCでは「STD」「Standard」と呼ばれることも多いです。
この設定で読める値が、前のセクションで触れた気圧高度です。

高高度では、すべての航空機がQNEに統一します。これにより、各機がそれぞれ異なるQNHを使っていた場合に生じる「基準のズレ」をなくし、縦間隔を正確に管理できます。
QNE使用時の高度はフライトレベル(FL)で表記します。FL350であれば、QNE基準で35,000 ftを指す値です。QNHが29.92でない限り、QNHをセットした状態で読める高度とは一致しません。つまり「FL350=35,000 ft」という考え方は厳密には正確ではなく、あくまで「QNE基準での35,000 ft相当の気圧高度」と理解するのが正しいです。

QNHとQNE

遷移高度と遷移レベル

QNHからQNEへの切り替えは、遷移高度(Transition Altitude)で行います。上昇中に遷移高度を通過したタイミングでセッティングをQNEに変更し、高度表記もFLに切り替わります。

逆に降下中は、遷移レベル(Transition Level)でQNEからQNHに戻します。

遷移高度・遷移レベルの具体的な値は国によって異なります。日本では遷移高度は14,000 ftを基準としていますが、その日の気圧状況によって最低利用可能フライトレベルが変わるため、実際の遷移レベルは毎日変動します。

まとめ

高度の種類 基準 主な用途
絶対高度 直下の地表面 地形・障害物との距離、電波高度計
真高度 平均海面(MSL) 航空図の標高
気圧高度 標準大気の海面気圧(QNE) フライトレベル、縦間隔の管理
密度高度 気圧高度+気温補正 パフォーマンス計算

アルティメターセッティングは、気圧高度計に「どの気圧面を基準として高度を表示させるか」を決める操作です。QNHでは平均海面からの高度に近い値を読み、STD / QNEでは標準気圧面を基準にした気圧高度、つまりフライトレベルを読みます。