0. 前編のおさらい
前編では、METARの構造を順に読み解きました。
風向・視程・RVR・雲・気温露点・QNH・TRENDと、空港のコードを一通り押さえたところで終わりました。
後編のテーマはTAFです。
METARと記号の体系はほぼ共通ですが、TAFには「これからの天気がどう変化するか」を表現するための独自の仕組みがあります。その読み方を、この記事でまとめて扱います。
1. TAFの構造をMETARと比較する
METARとTAFは、コードの体系がほぼ共通です。
風の表記も、視程も、雲も、同じルールで書かれています。ただし、TAFにはMETARにない要素が2つあります。
発表時刻と有効期間です。
実際のTAFの冒頭を見てみましょう。
TAF RJTT 230500Z 2306/2412 27015KT 9999 FEW020 BKN050
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| TAF | 運航用飛行場予報 |
| RJTT | 東京国際空港(羽田) |
| 230500Z | 23日05時00分UTC 発表 |
| 2306/2412 | 23日06時〜24日12時(有効期間30時間) |
| 27015KT | 風向270度・風速15ノット |
| 9999 | 視程10km以上 |
| FEW020 BKN050 | 雲:2,000ft・5,000ft |
TAFは1日4回、00・06・12・18UTCを起点として発表されます。
発表のタイミングは起点の約1時間前で、このTAFでは05時に発表され、有効期間は06時スタートです。
有効期間が30時間あるのには理由があります。出発前に目的地空港のTAFを確認するとき、単に「今どうか」だけでなく、到着予定時刻の天気はどうか、折り返し便の出発時刻にはどうなっているかを予測する必要があります。それには24〜30時間程度の予報が必要です。
ただし、30時間先の予報は精度的に限界があります。そのため6時間ごとに新しいTAFを発表し、常に最新の予報に更新し続けるという運用になっています。

有効期間の2306/2412 は「23日06時から24日12時まで」を表します。
前半4桁が開始、後半4桁が終了で、それぞれ「日付+時刻(UTC)」の形式です。有効時間が30時間であることが確認できるかと思います。
これ以降の気象要素の読み方は、前編で扱ったMETARとまったく同じです。
2. 変化グループとは何か
METARが「その瞬間の空港の状態」を伝えるのに対して、TAFは30時間分の天気の変化を一つの電文に収めています。そのために使われるのが変化グループです。
TAFの基本的な構造はこうなっています。
TAF RJTT 230500Z 2306/2412 27015KT 9999 FEW020 BKN050
BECMG 2310/2312 04012KT 2000 BR BKN005
TEMPO 2318/2322 0800 FG BKN002
最初の行が基本群で、有効期間を通じたベースラインの天気を表します。
2行目以降が変化グループで、基本群からどのように天気が変化するかを時間軸に沿って記述します。
日本のTAFで使われる変化グループは BECMG と TEMPO の2種類です。
どちらも変化の「性質」が異なります。BECMGは変化後の状態がその後も続く場合、TEMPOは一時的な変動にとどまる場合に使います。
(補足:ICAOや米国のTAFには FM(急激な変化)や PROB(確率予報)といった変化グループも存在しますが、日本のTAFでは使用されません。)
3. BECMGを読む
BECMG(becoming)は、予報期間の中で天気が変化し、その後は変化後の状態が続くと予想される場合に使います。
BECMG 2310/2312 04012KT 2000 BR BKN005
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| BECMG | 変化後の状態が続く |
| 2310/2312 | 23日10時〜23日12時の間に変化 |
| 04012KT | 風向040度・風速12ノット |
| 2000 | 視程2,000m |
| BR | もや |
| BKN005 | 雲量5〜7オクタス・雲底500ft |
変化の時刻群 2310/2312 は「この時間帯の中で変化が起きる」という意味で、変化が完了するのが12時とは限りません。
その時間帯のどこかで変化が完了し、以降は変化後の状態(風向040度・視程2,000m・もや・雲底500ft)が続きます。
BECMGの変化の仕方は3パターンあります。
- 徐々に変化:時間帯全体をかけて少しずつ最終的な値へ近づいていく
- 不規則に変化:時間帯の中で断続的に変化しながら最終的な値に落ち着く
- ある時刻に変化:時間帯の中のある時点で一気に変化する
いずれの場合も、時間帯が終わった後は変化後の状態が続きます。どのパターンで変化するかは予報者の判断で、電文上は区別されません。
また、変化グループに書かれていない要素は基本群の状態が続きます。
4. TEMPOを読む
TEMPO(temporarily)は、天気が一時的に変動すると予想される場合に使います。変動期間の間のみTEMPOで報じられた値になり、それが終わると基本群の状態に戻ります。
TEMPO 2318/2322 0800 FG BKN002
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| TEMPO | 一時的な変動 |
| 2318/2322 | 23日18時〜23日22時の間に変動 |
| 0800 | 視程800m |
| FG | 霧 |
| BKN002 | 雲量5〜7オクタス・雲底200ft |
変動のパターンは2種類あります。
- 1度だけ変動:変動期間中に1回だけ悪化し、それが1時間未満で収まる
- 繰り返し変動:基本群とTEMPOの値を行き来する。1回あたりの継続時間は1時間未満で、変動している時間の合計が変動期間の1/2未満

TEMPOに書かれていない要素は基本群の状態が続きます。この例では視程・天気・雲だけが書かれており、風は基本群の値が引き続き有効です。
運航判断にどう使うか(重要)
TEMPOの定義を踏まえると、変動期間の半分以上は基本群の天気状態であることが保証されています。
仮にTEMPOで報じられた天気が厳しい内容であっても、基本群が運航基準を満たしているのであれば、欠航よりも出発を遅らせたり上空で回復を待ったりする判断が取られることの方が多いです。
訓練フライトでも同じで、個人的にはTEMPOが出ているだけで訓練中止というのは判断として弱いと感じます。
数値だけを見て判断するのではなく、BECMGとTEMPOの定義に立ち返って「この天気がどれくらい続くのか」を読み取れるようになると、TAFの使い方がひとつ上のレベルに上がります。
5. TAFを通しで読む
実際にTAFを1本通しで読んでみましょう。
TAF RJTT 230500Z 2306/2412 27015KT 9999 FEW020 BKN050
BECMG 2309/2311 04008KT 2000 BR BKN008
TEMPO 2311/2315 0400 FG BKN003
基本群から順に見ていきます。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| TAF | 運航用飛行場予報 |
| RJTT | 東京国際空港(羽田) |
| 230500Z | 23日05時00分UTC発表 |
| 2306/2412 | 23日06時〜24日12時(有効期間30時間) |
| 27015KT | 風向270度・風速15ノット |
| 9999 | 視程10km以上 |
| FEW020 BKN050 | 雲:2,000ft・5,000ft |
06時時点では視程良好・風は西寄りで、穏やかなコンディションです。

次にBECMGです。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| BECMG | 変化後の状態が続く |
| 2309/2311 | 23日09時〜11時の間に変化 |
| 04008KT | 風向040度・風速8ノット |
| 2000 | 視程2,000m |
| BR | もや |
| BKN008 | 雲底800ft |
09時から11時の間に風向が北東に変わり、視程が悪化してもやが立ち込む予報です。気温と露点の差が縮まる時間帯に差し掛かり、霧の発生が近いことを示唆しています。この変化後の状態はそのまま続きます。

続いてTEMPOです。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| TEMPO | 一時的な変動 |
| 2311/2315 | 23日11時〜15時の間に変動 |
| 0400 | 視程400m |
| FG | 霧 |
| BKN003 | 雲底300ft |
11時から15時の間、一時的に霧が発生して視程400mまで悪化する可能性があります。
ただしTEMPOである以上、この状態が続くのは変動期間の半分未満であると予測することができます。基本群(BECMGで更新後)のもやの状態に戻る時間の方が長いということです。

前編の架空例(悪天時)でSPECIが発行されたのが13時UTCでした。このTAFを事前に読んでいれば、その時間帯に霧が一時的に発生する可能性があることは読み取れた、ということになります。
6. TAFがない空港はどうするか
TAFが発表されるのは、気象庁が指定した空港に限られます。大規模な空港や主要な国際空港にはTAFがありますが、小規模な飛行場や訓練飛行場にはTAFがないケースもあります。
そういった空港を目的地にする場合、代わりに使えるのが気象庁が提供する飛行場時系列予報です。TAFと同じく航空気象官署が発表する公式の気象情報で、風・視程・天気・雲の変化を時系列で確認できます。
飛行場時系列予報にはPart1とPart2があります。Part1は12時間先まで1時間ごとの予報、Part2はその後30時間先までを3時間ごとの予報で提供しています。TAFのような電文形式ではなく表形式なので、天気の変化をざっくりとイメージするのにも使いやすい形式です。


7. 用語・数値基準はフラッシュカードで
この記事ではTAFの構造と変化グループの読み方を扱いました。BECMGとTEMPOの違いが頭に入れば、TAFを一本通しで読む力はかなり上がります。
一方で、視程やRVRの運航基準値、天気略語の意味といった「数値と略語の暗記」はフラッシュカードで繰り返し覚えるのが効果的です。
また、このサイトではMETAR/TAFをそのまま貼り付けて日本語に変換できるMETARデコーダーと、最新の天気図をまとめて確認できる天気図ビューアーも公開しています。知識を定着させながら実際の電文に触れる練習にも使ってみてください。