この記事は法規カテゴリにしようか少し迷いました。他の訓練入門カテゴリの記事よりは内容が重めになっています

空域って何?

地上には道路があり、信号や標識などがあり、どこを走るかのルールが決まっています。空にも同じ発想で「どの航空機がどこを飛ぶか」を整理するためのルールがあります。
それが空域(Airspace)の概念です。

航空機の数が増えれば増えるほど、整理されていない空は危険になります。空域を区切り、それぞれにルールを持たせることで、空の円滑な交通流を保つことができます。
また、ひとつの空域に入域することができる航空機の数も決められており、管制官の処理容量を超えてしまわないように調整されています。

ここでは、日本の空域がどう分けられているかを概観します。

空域の層構造

管制空域と非管制空域

日本の空域は、

  • 管制空域
  • 非管制空域

の、2つに分けられます。

管制空域の中を飛ぶ航空機は、管制官との無線交信が必要になります。
一方、非管制空域では管制官との交信義務はなく、パイロット自身の判断で飛行します。

日本の管制空域は、さらに3つに分類されます。

  • 管制区(航空交通管制区)
  • 管制圏(航空交通管制圏)
  • 情報圏(航空交通情報圏)

(情報圏は厳密には管制ではなく情報提供なので、管制空域と呼ぶのは語弊があるのですが、非管制空域とも少し違う位置づけです。これは後で詳しく触れます。)

次の章から、それぞれを順にみていきます。

管制区(航空交通管制区)

管制区は、日本の空域の大部分を占める、広大な管制空域です。
地上から連続しているわけではなく、一定の高度以上からが管制区になります。

下限高度はいくつかのケースで異なりますが、基本的には地上600m(約2,000ft)以上が管制区の範囲です。
飛行場の周辺では、航空機の離発着が集中するため、より低い高度から管制区が始まります。

上限は特に設定されておらず、日本とその近海の上空すべてが管制区となります。
高高度には、IFRでしか飛行できない空域が存在しています。日本ではFL290(高度約8,800m)以上は事実上IFRの世界で、VFR機が上がってくることはまずありません。

管制圏(航空交通管制圏)

管制圏は、特定の飛行場を中心に設定される管制空域です。
飛行場の周辺は離発着する航空機が集中するため、専用の管制空域が設けられています。

範囲は、飛行場の基準点(標点)から半径9km、高さは原則として3,000ft(900m)MSLまでです。
原則の基準であり、空港の位置などにより異なることも多々あります。

管制圏内では、飛行だけでなく地上走行も含めたあらゆる航空機の動きに管制官の許可が必要です。
エンジンをかけてスポットを離れる瞬間から、着陸後に駐機場へ入るまで、管制官と交信しながら許可を得て動きます。

管制圏はすべての飛行場に設定されているわけではなく、比較的大きな空港などに限られます。

情報圏(航空交通情報圏)

情報圏は、管制圏が設定されていない飛行場のうち、IFRによる離着陸が行われる飛行場に設定されます。

管制圏との大きな違いは、管制官ではなく情報官が航空機と更新をします。情報官は名前の通り、管制ではなく情報提供を行います。
特にわかりやすいのは、離陸時には「Runway is clear」という用語で滑走路が空いているという情報が提供されます。
これは離陸の許可ではないため、最終的にはパイロットが滑走路の状況を目視で確認し離陸する必要があります。
指示はされませんが、情報圏内を飛行する航空機は「情報官の提供する情報を常時聴取する義務」があります。

訓練で地方の飛行場を使う場合、管制圏ではなく情報圏が設定されている飛行場も多くあります。
情報圏をATCで呼ぶときはレディオと呼びかけますが、やりとりが管制官との交信とは少し雰囲気が異なるので、最初は戸惑うこともあるかもしれません。

空港周辺

非管制空域

管制区・管制圏・情報圏のいずれにも該当しない空域が、非管制空域です。
国際的にはクラスGと呼ばれる区分にあたります。
具体的には、管制区の下限高度(基本600m)より低い空域で、かつ管制圏・情報圏が設定されていない空域がこれにあたります。

非管制空域では管制官との交信義務はなく、VFR機が比較的自由に飛行できます。
ただし、「自由」とはいっても航空法上のルール(高度制限・速度制限・見張りの義務など)は当然適用されます。

飛行規制空域

管制空域・非管制空域とは別に、特定の目的のために飛行が制限される空域があります。
まとめて飛行規制空域と呼ばれます。

主なものとしては、

  • 射撃訓練空域
  • 訓練試験空域
  • 禁止空域・制限空域

があります。

飛行規制空域の詳細については、法規カテゴリで改めて扱います。

おわりに

日本の空域は、管制区・管制圏・情報圏という3つの管制空域と、非管制空域に大きく分けられます。
それぞれに異なるルールがあり、どこを飛ぶかによってパイロットに求められる行動も変わってきます。

訓練を始めると、この空域の区分は教科書の話ではなく、毎フライトで意識するものになります。
「今自分はどの空域にいるか」を把握することが、安全な飛行の基本のひとつです。

空域断面図