航空機が飛行しようとするとき、出発前に「飛行計画」を関係機関へ届け出ることが法律で義務付けられています。

飛行計画(Flight Plan)とは、出発地・出発時刻・経路・目的地など、これから飛ぶ内容を関係機関に伝えるための情報です。単なる事務手続きではありません。

この記事でわかるようになるのは、次の3つです。

  • IFR機には「通報+承認」、VFR機などには「通報」だけが求められる——同じ通報でも法的な扱いが違うということ
  • いつ・どこへ・どうやって届け出るのか、という実務のルール
  • 飛行計画が、捜索救難(Search and Rescue:SAR)ともつながる仕組みだということ

なぜ通報するのか

飛行計画は、管制官に一律「飛んでもいいですか」とお伺いを立てるためだけの書類ではありません。VFR機ですら通報が義務づけられています。

大きな理由の一つが、捜索救難(SAR)です。飛行計画には出発地・経路・目的地・所要時間が書かれています。これは「予定通りなら、いつ・どこに到着しているはずか」という記録でもあります。
到着予定時刻を過ぎても連絡がなければ、この記録をもとに状況の確認や捜索救難の手続きが始まります。飛行計画を出していなければ、状況を把握する手がかりも、捜索範囲を絞る情報も失われます。

VFR機にも通報義務が課されているのは、捜索救難につなげるためです。

口述試験でも「飛行計画を通報せずに飛行した場合、どんなリスクがあるか」は定番の問いです。答えは今説明した通り捜索救難が遅れること――そしてここからさらに捜索救難の定義や手続きへと話が深掘りされていくパターンが多いので、まずはこの繋がりを押さえておいてください。

承認が必要な場合/通報だけでよい場合

根拠になる条文を見てみます。航空法第97条です。

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航空法第97条(飛行計画及びその承認)1項・2項
航空機は、計器飛行方式により、航空交通管制圏若しくは航空交通情報圏に係る空港等から出発し、又は航空交通管制区、航空交通管制圏若しくは航空交通情報圏を飛行しようとするときは、国土交通省令で定めるところにより国土交通大臣に飛行計画を通報し、その承認を受けなければならない。承認を受けた飛行計画を変更しようとするときも、同様とする。

2 航空機は、前項の場合を除き、飛行しようとするとき(国土交通省令で定める場合を除く。)は、国土交通省令で定めるところにより国土交通大臣に飛行計画を通報しなければならない。ただし、あらかじめ飛行計画を通報することが困難な場合として国土交通省令で定める場合には、飛行を開始した後でも、国土交通省令で定めるところにより国土交通大臣に飛行計画を通報することができる。

1項が対象にしているのは、IFR機が管制圏・情報圏の空港から出発するとき、または管制区・管制圏・情報圏を飛行するときです。この場合は「通報」に加えて「承認」まで必要になります。

2項は、それ以外のケース――主にVFR機――が対象です。こちらは通報だけでよく、承認は不要です。

IFR機の飛行計画は、航空交通管制や交通流管理の基礎情報として使われます。
だから内容を確認してもらい、承認を受ける必要があります。

VFR機は自分の目で他機を避けながら飛ぶ方式です。
管制官が計画を審査する必要はありません。

それでも通報だけは義務づけられています。
理由は前章の捜索救難です。承認は要らなくても、記録は要る、ということです。

IFRの承認とVFRの通報の違いを示す図

もう一つ、2項の文中に「(国土交通省令で定める場合を除く。)」という一文と、「あらかじめ通報することが困難な場合……飛行を開始した後でも……通報することができる」というただし書があるのに気づいたでしょうか。これが、次に見るVFR機の例外規定につながっています。

VFR機の9km・着陸ルール

3章の97条2項には、性格の異なる2つの例外が含まれていました。順番に見ていきます。

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通報そのものが不要になるケース
有視界飛行方式(VFR)で飛行する航空機が、
出発地を中心とした半径9km以内の範囲だけを飛び、かつその範囲内に着陸する場合、飛行計画の通報は不要です。

典型的なのは、訓練空港での場周経路(パターン)飛行です。

離陸して、パターンを回って、同じ空港に着陸する。
この一連の流れが9kmの範囲に収まっているなら、義務としては通報不要です。

ただ、実際にはこの例外に頼らず通報することがほとんどです。理由は2章の通りで、通報があれば捜索救難につながる記録が残るからです。

もう一つは、これとは性格が違う例外です。

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通報が「事後」でよくなるケース
VFR機が、捜索・救助のため飛行を開始する前に通報するいとまがない場合、または離陸する場外離着陸場に通報の手段がない場合は、飛行を開始した後、出発地を中心とした半径9km以内の範囲で速やかに通報すればよいことになっています。

VFR機の9kmルールを示す図

いつ・どうやって通報するか

通報先は、出発地を管轄する「空港事務所等」です。管制機関の種類がどう分かれているかは、前の記事で整理した通りです。

タイミングにはルールがあります。

早すぎてもダメで、移動開始時刻の120時間より前には通報できません。
遅すぎてもダメで、IFRの場合は少なくとも30分前までに通報する必要があります(航空交通流管理の観点からは2時間前が推奨)。

VFRについては、IFRのような「◯分前まで」という一律の数字は定められていません。原則は事前通報なので、余裕をもって済ませておくのが基本です。

方法は口頭(無線電話を含む)または文書です。近年はインターネット経由のサービスを使って通報することもできます。

何を届け出るのか

飛行計画に書く内容は、大きく分けると「どんな機体か」「どう飛ぶか」「もしものときの備え」の3つです。

区分 記載する内容
機体・乗員 国籍記号・登録記号・無線呼出符号、型式・機数、機長の氏名、搭乗する総人数
飛行方式 IFR・VFRの別
経路 出発地・移動開始時刻、巡航高度・航路、最初の着陸地(目的地)・所要時間
速度・装備 巡航高度における真対気速度、使用する無線設備
もしものとき 代替空港等、燃料搭載量

ここで一点、面白いのが燃料搭載量の書き方です。

「◯◯リットル」ではなく、「持久時間」を書きます。
捜索救難の視点に立つと理由がわかります。捜索範囲を絞る手がかりになるのは、燃料の量そのものではなく「あと何時間飛べる状態だったか」という情報だからです。

通報後に生じる義務

飛行計画は、出したら終わりではありません。

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航空法第97条 3項・4項
第1項又は前項の規定により、飛行計画の承認を受け、又は飛行計画を通報した航空機は、第96条第1項の国土交通大臣の指示に従うほか、飛行計画に従つて航行しなければならない。ただし、通信機の故障があつた場合において国土交通省令で定める方法に従つて航行するときは、この限りでない。

4 第1項又は第2項の規定により、飛行計画の承認を受け、又は飛行計画を通報した航空機は、航空交通管制区、航空交通管制圏又は航空交通情報圏において航行している間は、国土交通大臣に当該航空機の位置、飛行状態その他国土交通省令で定める事項を通報しなければならない。

3項は、届け出た計画通りに飛ぶ義務です。
4項は、位置・飛行状態等を通報する義務です。ただし全飛行中ではなく、管制区・管制圏・情報圏を航行している間に限られます。

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計画を変更するとき
IFR(1項)は承認を受けた計画なので、変更にも承認が必要です。
VFR(2項)はそもそも承認を受けていないため、変更に承認は不要です。ただし3項により通報した計画に従って飛ぶ義務は変わらないので、変更が生じたら通報し直しておくべきです。

飛行計画は、通報して終わりでもありません。飛行を終えたら到着を通知する義務が別途あり(航空法98条)、これを怠ると、無事に飛び終えているのに捜索救難の手続きが動き出しかねません。詳しくは別の記事で扱います。

まとめ

今回はマスキングテープ形式で、振り返っていきましょう。

  • 通報が求められる大きな理由の一つが、管制間隔の確保だけでなく捜索救難(SAR)につなげるための記録であること
  • VFR機には性格の異なる2つの例外があり、半径9km以内・同範囲内着陸なら通報不要、捜索救助等で事前通報のいとまがない場合は飛行開始後の事後通報が認められる
  • 通報のタイミングは、移動開始時刻の120時間より前は不可、IFRは少なくとも30分前まで(推奨は2時間前)
  • 通報後も、計画通りに飛ぶ義務(3項)と、管制区・管制圏・情報圏航行中の位置通報義務(4項)が続く