前の記事「飛行機の性能」で、密度と気圧をほぼ同じ意味で使ってしまいました。今回はその2つを整理します。
気圧と密度、似たような場面で登場する言葉です。
「高度が上がると気圧が下がる」
「高度が上がると空気が薄くなる」
——どちらも間違いではなく、日常会話ではほぼ同じ意味で使われることもあります。
ただ、エンジンの性能を正しく理解するには、この2つを区別する必要があります。
気圧と密度、何が違う?
気圧とは、空気が周りを押す力のことです。
私たちの頭上には大量の空気が積み重なっていて、その重さ分だけ周囲に圧力をかけています。
高度が上がるほど頭上に積み重なる空気の量が減るので、その圧力も弱くなります。
これが気圧が低くなるということです。
密度は、箱の中に空気の粒が何個入っているかをイメージするとわかりやすいです。
同じ大きさの箱でも、粒がたくさんあるほど密度が高い状態です。
空気の粒は重力によって下の方に多く集まっているため、高度が上がるほど粒の数は少なくなります。つまり密度も下がります。
高度が上がると、気圧も密度も下がります。だから似たような言葉として使われることが多いのです。

温度が絡むと、2つは別の変化をする
高度が上がると気圧も密度も下がる——変化の方向は同じです。
ただし、温度が絡むと2つは別の変化をします。
気圧は、頭上に積み重なる空気の重さで決まります。
温度が変わっても頭上の空気の量が変わるわけではないので、温度による気圧への影響は小さいです。
一方、密度は温度の影響を大きく受けます。空気は温度が上がると膨張する性質があります。
箱のイメージで言うと、温度が上がると粒同士の間隔が広がり、同じ体積の中の粒の数が減ります。
つまり密度が下がるということです。
これが気圧と密度の大きな違いです。同じ高度にいても、夏の暑い日と冬の寒い日では密度は変わります。しかし温度による気圧への影響は小さい。

気圧と密度の違い、イメージできてきましたか?
裏を返せば、温度の影響を除けば気圧と密度はほぼ同じ動きをします。
エンジンが気にしているのは「密度」
ここまで気圧と密度の違いを整理してきました。
では、エンジンの性能に関係しているのはどちらでしょうか。
答えは密度です。
エンジンは燃料と空気を混合して燃焼させることでパワーを生み出します。
このとき、エンジンが一度に吸い込める空気の体積はほぼ決まっています。
ここで密度が関係してきます。
同じ体積の空気でも、粒がたくさん詰まっているほどーーつまり密度が高いほどーー
より多くの空気をエンジンに取り込むことができます。
空気が多ければ燃料をより多く燃やせるので、パワーが出ます。
逆に密度が低いと、同じ体積を吸い込んでも空気の量が少ない。
燃料を燃やしきれずパワーが落ちます。
では気圧はどうでしょうか。
エンジンが気にしているのは「箱の中に粒が何個あるか」です。
粒の数が同じであれば、その粒が周りを押す力が強くても弱くても関係ありません。
だから気圧はエンジン性能に直接は関係しないのです。
つまり:
- 気温が高い日 → 密度が低い → エンジン性能が低下
- 高高度を飛行 → 密度が低い → エンジン性能が低下
以前の記事で「暑い日や高高度ではエンジンのパワーが落ちる」と説明したのはこういう理由です。
気圧ではなく密度が下がることが、エンジンに影響しているのです。

実際の性能計算では気圧も使う
ここは少し深掘りの内容です。訓練でパフォーマンス計算をしたことがある方や、すでに少し知識がある方向けの補足になります。まだ難しく感じる場合は読み飛ばしても大丈夫です。
「気圧はエンジン性能に直接関係しない」と説明しましたが、実際の性能計算では気圧のデータも参照します。
「あれ?」と思った方もいるかもしれません。
先ほど「温度の影響を除けば気圧と密度はほぼ同じ動きをする」と説明しました。
これがポイントです。
性能計算で最終的に必要なのは「密度」のデータですが、密度を直接測る手段は現実的ではありません。
そこで、気圧高度とその高度での外気温(OAT)の2つを用いてチャート上で計算し、密度を導き出しています。
気圧データをそのまま使っているのではなく、温度による補正をかけて密度に換算しているイメージです。
「高高度の方が燃費が良い」との矛盾について
前の記事で、こんな話をしました。
「高高度ほど燃費がいい。ただし密度が低いほどエンジンのパワーが落ちる。」 ー見矛盾しているように見えますよね
実はこの2つは矛盾していません。ただ、その理由をきちんと説明するにはもう少し別の知識が必要です。
対気速度(IAS)と真対気速度(TAS)の違いを知っておく必要があるため、別の記事で改めて整理します。
今はひとまず、矛盾していないとだけ覚えておいてください。